がんを作り出すと考えられている細胞をがん幹細胞(Cancer Stem Cell:CSC)と呼んでいます。
がん幹細胞は、1997年にカナダの研究チームによって初めて急性骨髄性白血病患者の血液から発見され「乳がん・脳腫瘍・前立腺がん・食道がん・大腸がん・膵臓がん・肝臓がん・頭頚部扁平上皮がん」にもがん幹細胞が、存在することが報告されています。
最近の考え方としてすでにがん化した細胞を傷害し、縮小しても、がんを作り出す「幹細胞」が残っていれば、再びそこから がん細胞が生み出され転移、再発をくり返すことが分かってきました。
がん幹細胞は、抗がん剤や放射線に対して 抵抗性があり退治することが困難であると言われています。がん幹細胞は、がん組織中に数%というごく微量しか存在しませんが、自己複製能力を持ち、自分と同じ細胞を維持しながら分化、増殖して周囲の多くのがん細胞を生み出す元になっているのです。
私たちの体細胞は、元々それぞれの臓器を構成する幹細胞から作られています。
肝臓なら将来肝臓になるべく細胞(肝幹細胞)が分化、増殖した結果肝臓という臓器が形成されます。
正常な細胞や幹細胞にはAPCという遺伝子が存在します。
正常な細胞のAPC遺伝子がおかしくなっても、正常細胞はがん化しないことが分かっています。
正常な幹細胞のAPC遺伝子がおかしくなると その正常幹細胞ががん化します。
この最初のステップが、がん幹細胞の元と考えられます。
私たちは、がん幹細胞を障害する治療法を開発することが、がんの再発、転移の克服につながると考えて、長年「がん幹細胞」というがんの供給源となる細胞を標的とする新しい免疫治療法の研究開発をしてきました。
キラーT細胞(細胞障害性Tリンパ球:CTL)、NKT細胞、γδT細胞、NK細胞が、がん幹細胞を認識して攻撃するためには、まず樹状細胞(Dendritic cell: DC)にがん幹細胞に発現しているがん抗原分子を認識させるということに注目し、以下の三つの条件が必須と考えました。
(1)がん幹細胞の特異的抗原の存在。
(2)がん幹細胞の共通抗原の存在。
(3)がん幹細胞でない 通常のがん細胞抗原の存在。
特に、がん幹細胞を攻撃するにはがん幹細胞に(1)か(2)の条件が存在し、樹状細胞がこれを認識して「CTL・NKT細胞・γδT細胞・NK細胞」にその情報を伝達する必要があります。
私たちは、がん幹細胞特異抗原・共通抗原を樹状細胞に認識させてがん幹細胞・がん細胞を攻撃する治療法を開発しました (DCアイバック・CSC療法)。
「BASIC」に樹状細胞ワクチン療法を付加した(WT1 ペプチドおよびがん幹細胞を標的とした抗原ペプチドを用いた)もので、ペプチドにより標的のがん情報を記憶した免疫細胞が、がん細胞とがん幹細胞の両方を標的とし攻撃します。ほぼすべてのがんの治療および予防、手術後のがん転移、再発の予防にも適応があります。
副作用の頻度は多くなく重篤なものもみられませんが、一過性の発熱、注射部位の発赤・発疹・搔痒感などがみられることがあります。免疫チェックポイント阻害剤との同時期併用は、重篤な副作用を起こす可能性がありますので、慎重に検討する必要があります。
培養期間が必要ですので、採血してから投与まで3週間ほどかかります。培養工程で細胞の汚染(細菌の混入など)により規格を満たさなかった場合、また、患者様の体調や、天災により培養細胞の運搬に支障が生じ、投与予定期間内に投与できなかった場合、あらためて、採血・培養をやり直す必要があります。
症例により効果に差があり、病勢が強い場合は、まったく治療効果が見られないことがあります。
三番町ごきげんクリニック
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